デッドラインのその先で



 

2016年 日本

制作: Cocotori

制作ツール: RPGツクールVX ACE

作者様サイト: http://cocotori.hariko.com/

DL: http://www.freem.ne.jp/win/game/13057

プレイしたバージョン:Ver1.0 ~1.01

  事故によって命を落としてしまった男性・橘 喜一郎。死者となった彼の気がかりは、男手一つで育ててきた娘・留亜のことだった。魔界よりの使者・メストレスに見出された喜一郎は、現世とあの世の狭間を駆け回り、お化けたちの手助けを受けながら娘の身に迫る危険に立ち向かっていく。しかし、娘をつけ狙う怪異との戦いの中で、喜一郎は生前知ることのなかったいくつもの想いに気づいてゆく。

 

 2016フリゲ展!theFINAL 夏 参加作品。状況に応じて表と裏の世界を切り替え、マップ上の障害物を越えたり必要なキャラクターに話しかけたりしながら、目的地までたどり着くパズルゲームです。

 最初はそれほど難しくなさそうに感じましたが、プレイしてみるとすぐ進めそうな地点では意外に手こずったり、逆に一見難所のようなポイントも視点を変えただけですんなり通れたりと、いい意味で予想を裏切られどおしでした。ミスした時にも即リトライ可能なため、スムーズに遊べたのも印象に残っています。

 全編を通してボリューム・難易度ともにちょうどよく、ハマりや時間制限のようなストレス要素もなかったため、最後まで快適に遊べました。試行錯誤しながらのプレイが苦にならないバランスは、多くのゲームを制作されてきた作者様ならではの調整だと思います。

 

 また、パズルマップの合間に語られるストーリーも、親子関係や大事な人を失うことについて考えさせられる、しみじみとした内容でした。

 自分が死んでも一人娘の心配ばかりの喜一郎さん、親心の暴走に振り回されつつサポートは的確なメストレスちゃん(性別不明なので「くん」の可能性も?)、そんな二人に守られているとは知らず、胸にひそかな罪悪感を抱く娘・留亜ちゃん。親子それぞれの不器用な思いやりやすれ違いの描写は共感できる部分も多く、それだけに最後のシーンでは大いに涙腺を刺激されてしまいました。物語の後味も夏らしく爽やかで、ほのぼのとプレイできました。

 

 明るい雰囲気の物語が好きな方、キャラ同士のコミカルなかけ合いを見たい方、頭の体操をしたい方、親子の関係について考えたい方にオススメな一本です。現在公開中のバージョンでは次の目的が表示されるようになり、フリゲ展夏で公開された時よりさらにわかりやすくなりました。

 なお、作者様は本作の他にもフリーゲームを数多く制作されておられます。連作長編「エレメンティア・メンバーズ」は2016年11月時点で11章まで発表されており、今後の展開にも期待が高まるところです。

 

 

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