戦海ディザイア



 

2016年 日本

制作: レイ

制作ツール: RPGツクールVX ACE

作者様サイト: http://alpha1995.jimdo.com/

DL: http://www.freem.ne.jp/win/game/12944

プレイしたバージョン:Ver1.0~1.04

 戦闘部隊「逆十字」。大国アーティシア中から精鋭が集い、異形「カース」を狩るための組織。特異な能力「ギフト」を駆使して戦うその構成員は、常人とは比較にならぬ富と力を与えられながらも、敗北した瞬間全てを奪われる。己を蹴落とさんとする者とは、誰であろうと戦う他にない――「この世は力こそ全て」なのだから。

 そんな非情の組織に属するフェル・ユリエッタ・アーギーの三人は、とある夏の日、ひとときの休暇期間を手に入れる。バカンスのため海辺を訪れた三人だったが、そこで彼女らを待ち受けていたのは、無数のカースとその使役者「アギト」たちであった…。

 

 2016フリゲ展!theFINAL 夏 参加作品。「ショコラいろのセレナーデ」を手がけたレイ様による、シビアな世界観のゲームです。ダンジョン探索のないノンフィールドRPG形式を取っており、決められた距離の中でレベル上げ・アイテム売買をこなしながら、ボス格の敵との戦闘に備えることになります。

 

 弱肉強食の世界を描きながら手放しでは肯定しないシナリオや、それぞれいい意味でハジけたキャラクター(特にパーティメンバー・アーギーの強烈な言動は必見)、要所要所のイベントを盛り上げる一枚絵やBGMなど、本作には数多く魅力が存在します。その中でも特筆すべき点は、やはり快適なシステムと歯応えのある難易度でしょう。

 

 ノンフィールドRPGはシンプルな構造であるぶん、快適性をどこまで高められるかは、作り手の感覚に大きく委ねられるものがあると思います。その点に関し本作では、任意タイミングのレベル上げ戦闘やアイテム売買、セーブ制限なし、ボス戦前自動全回復など、ストレスを極力取り払う作りになっていたのが印象的でした。

 いつでもザコ戦の機能は道中でもエンカウントがあるため、ほぼ使用しませんでしたが、その他のシステムにはプレイ中とてもお世話になりました。こうした快適性の重視については、前作からユーザビリティにこだわりを持って制作されていた作者様らしいな、と大いに感じます。

 また、遊び手のプレイスタイルに合わせて変化する難易度も、このゲームの大きな魅力であると思います。私はほどほどにザコ戦をこなしながら遊びましたが、キャラクターの装備やスキルを調整すれば、レベル上げなしでのクリアも可能なようです。物語を貫く「弱肉強食」をどこまで体感するかは、文字通りプレイヤー次第なのです。

 

 上に挙げた点の他にも、道中でのかけ合い、細かなグラフィック差分(状態異常時に立ち絵が変わるゲームは初めて見ました)、作中の用語解説など、いたるところに驚きと楽しみを感じながらプレイできました。

 短時間で濃厚なRPGを楽しみたい方、一風変わった世界観や物語を見てみたい方はプレイして損のないゲームだと思います。現在公開されているバージョンは初出時から何回かの修正が施され、より遊びやすくなっています。

 なお、作者様のTwitterによれば一部キャラクターや設定が共通する新作を制作中とのことで、期待の高まるところです。

 

 

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