美術空間



 

2015年 日本

制作: ふーみん

制作ツール: RPGツクールVX

公式サイト: http://www.bijutsukukann.com/

DL: https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_4265.html

プレイしたバージョン:Ver1.06a

  「『悲願の絵筆』を破壊することこそ、あなたの使命」。謎の声に導かれるまま、記憶を失った状態で目覚めた男・フレディー。見る者を威圧する巨躯、破壊の象徴のような大剣とは裏腹な優しさを秘めて、おぞましくも美しい絵画の世界を彼は旅する。帰還を望む囚われた者たち、魔界から人間界へ侵攻しようとする悪魔の軍勢、そして心強い協力者。出会いと別れの果てに自らの運命を知りながら、フレディーは使命のためにただ力を尽くす。

 

 「悲願の絵筆」を手にした美術家ロドリゲスが生み出した、美しく奇妙な絵画の世界を冒険するRPG。ややシビアな戦闘バランス、印象的なBGM、独特な世界観と、何よりも鮮烈なビジュアルが目を引くゲームです。

  「美術空間」という題に違わぬ、ビジュアル面での高い訴求力を持つゲームです。禍々しさ、おぞましさ、物悲しさの中に独特の神秘性が感じられるダンジョン構成は、フリーゲームどころかゲーム全体を通しても、なかなか類を見ないインパクトがあるように思います。とりわけラストダンジョンは、BGMも内部構成も、もはやそれ自体がひとつの作品のような、素晴らしい光景だと感じました。

 

 苛烈な世界観に対して、パーティメンバーは全員が好人物です。軽妙な掛け合いを繰り広げながら突き進んでいくさまは、苦しい戦闘の合間にもある種の爽快感を生み出してくれます。それだけに表エンドのほろ苦さや、裏エンドの皮肉さが引き立って見えますが…。

 プレイした身としては主人公・フレディーの外見やそれに似合った男気、意外なほどユーモラスで快活な性格にすっかり惚れ込み、先が気になって足を進めました。個人的には今までプレイしたゲームの中で一、二を争うほど素敵な人物だと思っています。

 

 ゲームを遊んだ時、自分ひとりで静かに余韻を味わいたい作品もあれば、誰かと物語を共有したい作品もあると思います。この作品について言えば、一人で内容について思いを巡らせて欲しくもあり、とにかくいろいろな人にプレイして欲しくもある、そんな悩ましい魅力に溢れたゲームでした。作者様は現在新作を開発しておられるようなので、そちらにも期待しております。

 

※2017.5.28追記:現在、作者様のTwitterで新作「Moonlight Castle」の制作情報が公開されています。

 

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