雨雲



 

2015年 日本

制作: サム 

制作ツール: LiveMaker

作者様サイト: http://love2daimission.blog13.fc2.com/

DL: http://www.freem.ne.jp/win/game/8758

プレイしたバージョン: Ver1.07

 奇妙な連続失踪事件が続発していた。行方不明者はいずれも若い女性、姿を消す前触れはなく、おのおのの荷物も部屋に残されたままだった。警察の捜査も結果は挙がらず、原因不明の蒸発は続いてゆく。

 同じ頃、社会人になりたての女性・三森 哲子は偶然、かつての同級生・半田 さゆと再会する。知り合いとの思わぬ出会いを喜ぶ三森だったが、これが自身の運命を大きく変えてしまうことを、この時彼女は知るよしもなかった。

 

 ニコニコゲームフェス5 ノベルスフィア賞受賞作品。若い女性が相次いで姿を消す事件と、その核心に関わった人々の様子を描くサスペンスADVです。物語は章立て形式となっており、後半部分には文字入力などの推理パートや選択肢によるエンディング分岐が組み込まれています。

 プレイヤーはいくつかの章に分割された物語を、異なるキャラクターの視点で体験してゆくことになります。作中に登場するキャラクターは主要人物から脇役までほぼ全てに個別のグラフィックを与えられており、場面ごとに数多く挿入されるイベントスチルも相まって、派手すぎず没個性でもない絶妙な性格付けを楽しむことが出来ました。彼ら自身の考え方や悩みも身近なものばかりで共感しやすく、それが物語全体への没入感を深めていたようにも思います。

 特定の章を読み終えた後には別視点のサイドストーリーが解放されることもあり、併せて読むと登場人物同士の葛藤や感情のすれ違いをより深く感じられました。

 

(ここから先は間接的なネタバレを含みます)

 

 作中登場するキャラクターがいずれも魅力的なのは先にも述べたとおりですが、個人的な意見を挙げれば、もっとも強く印象に残ったのは第二章の主人公でした。ネタバレを避けるためキャラクター名は伏せておきますが、この人物の置かれた境遇や内心の葛藤を考えると、「鬱屈した環境から抜け出すために自分を変える」という選択自体は間違いではなかったように思います。

 もちろん当人の犯した罪が許されるわけではありませんが、時系列的に後のエピソードで他のキャラクターが口にしていたように、誰かひとりでも身近な人間が存在していたなら、ゆがんでしまったその思考を変えられていたなら、と、物語を読み終えた後も考えずにはいられませんでした。

 

(ネタバレ終了)

 

 日常生活にひそむ恐怖を体感したい方、推理ゲームが好きな方、現代日本を舞台にしたスリラー小説を読まれる方にオススメしたい作品です。

 作者様は本作の他にも「蒼の屋敷」などのフリーゲームを公開されており、かわいらしいキャラクターデザインとスリルあふれる物語を楽しめます。

 

 

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