1997年 日本

脚本 黒沢 清 氏

監督 黒沢 清 氏

キャスト  役所 広司 氏、萩原 聖人 氏、うじき つよし 氏 他

 　奇妙な共通点を持った殺人事件が群発していた。関係者も場所も動機もばらばらなそれらの事件では一様に、被害者の首から胸が×状に切り裂かれていたのだ。精神を患う妻に悩まされながら事件を追う刑事・高部は、事件の背後に潜む男・間宮の存在へと辿り着く。自ら記憶を失いつつ、出会う者達に「お前は誰だ」「何者だ」と問いかけ続ける間宮。心を惑わすような彼の言動に翻弄されながら、高部はやがておのれ自身想像しなかった自分に気付いてゆく。

 　1997年度ニフティ映画大賞(現インターネット映画大賞)　 日本映画作品賞受賞作。役所 広司さん扮する刑事と、萩原 聖人さんの演じる謎めいた男・間宮の会話が核となっているサイコホラー。 

　間宮の言葉によって心の枷から解放され、日常的行為の延長のように殺人へ赴いてしまう人々のあっけなさは恐ろしく、救われないものを感じさせます。黒沢監督の作品はどれも鑑賞後にいい意味でモヤモヤが残るのですが、とりわけこの作品は一時期不眠に陥るほどに衝撃の強い作品でした。

　ゆったりとしたテンポにアレンジされた「ジプシーの踊り」、白い光と水を湛えた廃墟の部屋、荒涼としたいくつもの日常風景。愛するものを排除しなくては得られない心の解放とは何なのだろうか、と鑑賞後にしばらく考えさせられました。

　2016年6月現在、通常盤のほか廉価盤DVDも発売され、入手しやすくなっています。監督執筆の小説版も存在しますが、こちらは新品での入手は難しい模様。

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