1991年 日本

脚本 小中 千昭 氏

監督 石井 てるよし 氏

キャスト  藤原 秀樹 氏、三浦 洋一 氏、丸典膳 カイ 氏 他

　ロックスターを目指す太郎は、至って普通の中学生。何かと世話を焼く同級生・美香や、バンドオーディションで出会った少年・雅之と交友を深める彼は、ふとしたことから巨大な陰謀に巻き込まれていく。太郎自身も知らなかった血脈の秘密に由来するそれは、いにしえの超常存在「鬼」を蘇らせようとする人間たちの策略だった。奮闘むなしく美香をさらわれながらも、謎の男・紀本の協力を得、敵の本拠地に乗り込んだ太郎の見るものは…。

　メジャー中のメジャー民話・桃太郎を題材に、ロックスター志望の中学生VS古代の鬼を蘇らせようとする新興宗教を描く伝奇ファンタジー。脚本は小中 千昭氏、主演は恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)のトリケラレンジャーでおなじみ藤原 秀樹氏。

　良くも悪くも90年代初頭の雰囲気が色濃い、青春伝奇ファンタジー特撮映画。普通の少年が陰謀に巻き込まれ、ヒロインを助けるため奔走するというシナリオだけ聞けばありふれたもののようですが、その実オリジナリティにあふれた一本です。

　前述した脚本・小中 千昭さん、主演・藤原 秀樹さんの他、脇を固めるのはじゃあまん探偵団魔隣組(1988)に出演された丸典膳 カイ氏。初々しい中学生役を伸びやかに演じられる藤原氏と対照的に、どこかクールで不思議な存在感をお持ちです。

　好きな方にはたまらないスタッフや主要キャストの他、かの大槻 ケンヂ氏が妙にアクの強い警備員役で出演されていたり、今やすっかり演技派俳優として名を馳せた竹中直人氏が黒幕役を怪演していたり、見どころを語ればキリがありません。

　見どころはキャスティングだけに留まらず、高速道路を自転車で駆け抜ける中盤のチェイスシーンや敵団体の蠢く地下洞窟へ侵入するシーンなど、比較的コンパクトな尺の中にいくつもの印象的な場面が詰まっています。伝奇調な本筋の合間にも、中学生らしく多感な時期を過ごす主人公・太郎と同級生の美香との恋愛未満なやりとりや天才キーボード少年・雅之との友情模様が挟まれたりで、なんとなく気恥ずかしさにニヤニヤしてしまったり。いろいろな意味で「おお…」と言わずにいられない敵方の「鬼」や、三浦 洋一氏扮する(若干主役を食ってしまっている感もある)謎の男・紀本など、少々型破りな点も含めて楽しく見られる一本です。

　今のところVHS版(絶版)のみの販売となっているため、正規の手段でなかなか見られないのが困りものですが、ギターを弾いたり自転車で疾走したり多芸な藤原さんが見られるオンリーワンな映画です。

　ワンフレーズ少々だけなのが残念ですが、トリケラレンジャー(の中の人)が歌う「日本印度化計画」は必聴ですよ。本当。

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