ザ・フライ The Fly


1986年 アメリカ合衆国

脚本 チャールズ・エドワード・ポーグ 氏

監督 デヴィッド・クローネンバーグ 氏

キャスト  ジェフ・ゴールドブラム 氏、ジーナ・デイヴィス 氏 他

 物質転送装置「テレポッド」の開発に心血を注ぐ、若き天才科学者セス・ブランドル。あるレセプション会場で女性記者ヴェロニカと親しい仲になった彼は、彼女の助けを得て研究を進めてゆく。しかし、ヴェロニカがかつての恋人・ステイシスへの愛情を断ち切れずにいることは、セスにとって耐え難い苦痛をもたらした。

 ある晩、ヴェロニカとステイシスの関係に嫉妬し酩酊したセスは、正常な判断力を欠いた状態でテレポッドの実験を行う。それは彼自身を実験台とした狂気の行動であり、避けられぬ破滅への第一歩であった。

 

 1958年に公開された「ハエ男の恐怖」のリメイク映画。「ヴィデオドローム」、「スキャナーズ」などで知られるクローネンバーグ監督の作品。転送装置の実験中紛れ込んだハエにより異形と化し、人の道を踏み外していく科学者の悲劇を描く。

 転送に失敗したヒヒの臓物が溢れるシーン、ヒロインの堕胎手術中に巨大なウジ虫が生まれるシーン、ハエ男となった科学者の顔面が崩壊するシーンなど、本作は

至るところにグロテスクな描写が満ちています。しかし、そうした衝撃的な映像の中で語られる物語は、意外なまでに身近な感情に根ざしたものです。

 愛ゆえの苦悩と狂気に苛まれ、自ら異形へ変貌してしまうセスの悲しみは、その結末も含めて強く心に残るものでした。愛しい者が二目と見られぬ姿になった時、人として生きられなくなったその時、どのような道を選ぶのか。「怪物になる」というファンタジックなシチュエーションを通して鑑賞者に問いかける、そんな寓話めいた作品であったようにも感じられます。

 

 2017年5月現在、Blu-rayやDVDの他にも各種オンラインレンタル・動画配信サービスで取り扱われており、容易に視聴することが可能です。

 

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