ヒルコ  妖怪ハンター HIRUKO THE GOBLIN


1991年 日本

脚本 塚本 晋也 氏

監督 塚本 晋也 氏

原作 諸星 大二郎 氏

キャスト  沢田 研二 氏、工藤 正貴 氏、上野 めぐみ 氏 他

 かつて新進気鋭の考古学者として期待されながらも、学説の奇異さゆえに異端者扱いされる男・稗田 礼二郎。彼のもとに届いた一通の手紙は、義兄である中学教師八部からのものであった。謎の古墳を発見したとの便りに従い、八部の住む地方へ足を運んだ稗田。しかし、手紙を寄こしたはずの義兄は、教え子である少女・月島とともに不可解な失踪を遂げていた。

 稗田の来訪と同じ頃、八部の息子・マサオは父の行方を追っていた。友人と連れ立って学校を訪れた彼は、姿を消したはずの同級生・月島を目撃する。だがその時マサオの背に鋭い痛みが走り、校舎内に怪しい影が蠢き始める……。

 

 「ジュリー」の愛称で知られる歌手・沢田 研二 主演、塚本 晋也監督の伝奇ホラー。諸星 大二郎 氏の伝奇ロマン漫画「妖怪ハンター」シリーズから数作品をベースに、独自の世界観を構築しています。

 物語の主軸となっているのは、何をおいても異形ヒルコの恐怖、そして超常的な存在との死力を尽くした戦いでしょう。美少女の顔に蜘蛛の脚が生えた異形ヒルコの跳梁、次々と殺される登場人物など本編中には残酷描写がふんだんに織り込まれており、出演された俳優の熱演と相まって凄まじい迫力があります。

 しかし、本作の見どころはそうしたスプラッター場面のみに留まりません。過激な描写の合間につづられるマサオの淡い片思い、稗田から亡き妻への深い愛と後悔――あるいは夏の熱気に満ちた木造校舎の佇まい、終幕に揺れる稲穂の美しさ――ホラー映画にはミスマッチにも思える風景美や素朴な恋愛感情が、本作においては残酷とほろ苦い郷愁を同時に味わえる、稀有な魅力の源として機能しているように思えます。

 

 キャストの方がすばらしい演技を披露されているのは先に述べたとおりですが、その中で特に印象深かったのは、やはり主役の沢田 研二氏です。原作版のクールで理知的な稗田先生を期待するとやや期待外れな感もありますが、手製の妖怪センサーやキンチョールを手に異形へ立ち向かう沢田氏の姿は和製ゴーストバスターズとも言うべき独自の味わいを醸し出しています。

 また、ヒルコの器となるヒロイン・月島令子を演じる上野 めぐみ氏の、清楚かつ健康的な美しさにも目を見張るものがあります。それだけに、作中ほとんど怪異としての登場なのが惜しいのですが……。

 

 2017年5月現在、国内盤DVDは残念ながら中古品以外の取り扱いがないようですが、GEOなど一部オンラインレンタルサービスでは取り扱っているようです。

 

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