ベターマン BETTERMAN


1999年 日本

全26話 (4/1-9/30 放映)

監督 米たに ヨシトモ 氏

原作 矢立 肇 氏、米たに ヨシトモ 氏

キャスト  山口 勝平 氏、氷上 恭子 氏、子安 武人 氏 他

 時は2006年。精神崩壊とそれに伴う大量殺戮を引き起こす未知の病「アルジャーノン」が、世界に蔓延しつつあった。そんな中でも快活に暮らす男子高校生・蒼野 蛍汰(あおの けいた)は、ある日ひょんなことから開園直前の地下遊園地「ボトム・ザ・ワールド」に迷い込み、見慣れぬロボットに搭乗した幼馴染の少女・彩 火乃紀(さい ひのき)と再会する。

 火乃紀に協力し、地下遊園地にはびこる奇怪な殺人マシンたちを撃退した蛍汰は、彼女への協力を通してなし崩しにアルジャーノンの調査へと関わってゆくことになる。それは人智を超えた謎の存在「ベターマン」の秘密に迫る行為であり、彼自身の運命を変える選択でもあった……。

 

 「勇者王ガオガイガー」、「BRIGADOON まりんとメラン」などで知られる米たに ヨシトモ監督のSFホラーアニメ。「ガオガイガー」とは共通の作品世界ですが、全体の雰囲気は正反対となっています。

 

 作品の特徴として第一に挙げられるのは、他に類を見ない執拗かつバラエティに富んだ恐怖描写でしょう。第一話に登場する狂った殺人マシンを皮切りに、バーナーを操る殺人鬼・建物全体を埋め尽くす大量の虫・心の闇を暴き立てる異形の怪物と、恐怖の源がさまざまな形で描かれます。とりわけ虫に関するエピソードは中盤で何度も反復され、登場する度に生理的な嫌悪感とおぞけを煽ります。

 

 各回において鮮烈な恐怖が描かれる一方で、本作はまた、緻密に組み立てられた科学ドラマとしての魅力を宿しています。作中では登場人物のセリフを通して難解な専門用語や理工学理論が頻繁に顔を出し、ストーリーの展開も初見で全てを理解しきれないほどの複雑さを見せます。しかし、物語の裏に隠された膨大な情報量、どこか影のある登場人物の造形、そして最後に明かされる驚くべき真実は、波長が合った視聴者を虜にすること請け合いです。

 

 事件に立ち向かう人間たちは、個々に特殊な才能・すぐれた能力を持ちながらも怪異に対して劣勢に陥ることが多々あります。作中登場する調査用ロボット・ニューロノイドも格上の存在に対しては苦戦を強いられるパターンが多く、活躍を期待すると肩透かしを食らう場面もあるでしょう。ただ、そういった人間たちの苦闘は決して無意味でなく、ときに超存在ベターマンなしに事態を大きく進展させることがあります。本作においてベターマンはそれ単独で事件を解決する要素ではなく、あくまで脅威を退ける存在――運命に翻弄されながらも真相究明に向けて努力する人々の濃密なドラマこそが、この物語の核であるようにも感じられます。

 良質なホラーアニメが見たい方、「ウルトラQ」あるいは「怪奇大作戦」といった往年の怪奇特撮作品がお好きな方、複雑な設定や専門用語の頻発がお気にならない方にはぜひともお勧めしたい作品です。

 

 2017年5月現在、DVD版の新規販売はほぼ行われていないため、視聴するには有料の動画配信サービスを利用する必要があります。

 また、アニメーション制作会社サンライズのウェブサイト「矢立文庫」において本作と勇者王ガオガイガーの続編小説「覇界王 〜ガオガイガー対ベターマン〜」が連載されています。

 

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