ボストン考

あるいは宇宙一男前な非実在ロブスターについての覚書


 ボストンというロブスターのことを、みなさまはご存知でしょうか。

 

 ご存知の方にはいまさらの話ですが、ボストン様はスクエニ社(旧スクウェア)のRPG「ロマンシング サ・ガ3」に登場する仲間の一人です。サ・ガシリーズは元々仲間キャラクターに亜人やモンスターやメカなど人外が多いのですが、彼も御多分にもれずその一角、なんとロブスター族なのです。

 

 世界の西端にある「最果ての島」に住んでいた彼は、強敵フォルネウスからの刺客に故郷を沈められそうになっていたところで主人公と出会います。プレイヤーが彼の渋いおねだり(私も君の船に乗せてくれないかな、とかそういうニュアンス)を承諾すれば、見事パーティメンバーの一員になってくれます。そんな彼がどんな能力を持っているのかといえば、決して出オチでなく、腕力も魔力も水準以上と器用なお方。玄武術なる水の術法を使いこなす一方で、徒手空拳をふるって敵を蹴散らす、なかなかアグレッシブなロブスターなのです。

 

 そして、なんといっても特筆すべきはボストン様専用の装備、贅沢にも二種類ございます。ひとつはロブスターメイル、読んで字の如くロブスター族の鎧(というか甲殻?)です。防御力はそこそこありますが、固定装備で外せないのが玉にキズ。そしてもう一つは、ハ サ ミ 。装備というか手の形状では、という気もしますが、これが思ったより強く、他キャラのパンチを上回る威力です。

 

 その他にも入手が難しい陣形「玄武陣」を持っていたり、水の攻撃に対してほぼ無敵だったり、戦闘中に復帰できる回数の上限であるLPがかなり高かったり、全体的に尖ったキャラ付けをされているのが特徴的です。ボストン様はバランスブレイカーというほど強くはありませんが、マルチに活躍できる有能な方なのです。

 

 欠点といえばあんまり高くない器用さ、玄武術と体術以外あまり恵まれない技・術適性、そして(きわめて不本意なことに)ぶっちぎりで低い魅力ですが、そんなものボストン様には不要なのです。術も武道も嗜むインテリゲンツィアロブスター、ロマンの極致ではありませんか。

 

 故郷を狙う敵を倒した後も、ボストン様は律儀に主人公の旅に付き合ってくれます。海底のみならず山岳にも密林の要塞にもはるか東方の地にも、そして最終決戦の地アビスまで。こんなに男気あふれるロブスター、他に登場するゲームがあるのでしょうか。私は寡聞にして、未だ見たことがありません。

 

 ネタバレになってしまいますが、最終決戦のおり、連れて行ったキャラクターがそれぞれコメントをつぶやきます。そこでボストン様が口にするのが、次の一言。

 

「最果ての島から終末へ…おもしろい」

 

いやほんと、なんて含蓄に富んだ言葉でしょうか。

 

 ボストン様には派手なセリフやイベントが用意されているわけでもなく、ゲームの進行上加入させなければいけないキャラクターでもありません。でも、それでいいし、それがいいのだと思います。

 ロマンシングサガ3、いつかお手に取られる方がいらしたら、西の果ての島で真っ赤な彼に話しかけていただきたいです。

 とても理知的なロブスターさんと、ちょっと変わった冒険が楽しめますから。

 

 なお、さんざん彼彼連呼しましたがボストン様の性別は不明となっておりますので、もしかするとクール系美少女術戦士である可能性もなくはないのかもしれません。

 ロブスターであることは確定ですが。

 

 

 

 

 

(画像はいらすとや 様よりお借りしました)

 

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